『創立百周年記念 庄内』は、名古屋市立庄内小学校の創立百周年を記念して編纂され、1973年2月1日に発行された本である。そのころ私は庄内学区に住んでいて、町内の回覧板で同書刊行を知り、入手したように憶えている。
12年ほどそこに住民票を置いていたが、学区のことにはあまり関心がなかった。中学・高校生、大学生にとって、住んでいる町のことに興味があるというのは稀だったのではないだろうか。関心は外に向かっていて、それが普通だったと思う。それでもこの本を注文したのは、この町にある堀越町遺跡の記述を期待したからで、後知恵を含めて言えば、私にとってこの遺跡は、ローカルでありながら日本史を考える与件であった。
1970年に遺跡が発見され、その年に名古屋市文化財調査委員の吉田富夫先生が出土遺物を調査してから2年以上が経過していたから載っているだろうと思ったのだが、そこにあったのは古い情報で、期待外れだった。たしかに、発見はニュースになっていなかったし、活字で報告されてもいなかったので、周知されていないのも無理からぬこと。載っているだろうと思ったのは子どもの浅知恵であった。
以来47年、何度かの転居に際しても伴ってきたが、開いて読むことはほとんどなかった。ところが、最近座右に置いてよく見るようになったのは、この本をつくるときに撮影されたと思われる写真がいくつか載っていて、いまはもう見ることのできない40年前、50年前の景色であることに想到し、検証しておきたいと思ったからである。きっかけは、堀越町遺跡の写真2点の検討であった(1) 。その延長に、惣兵衛川、庚申塚などがある。この作業はしばらく続きそうで、カテゴリに「『創立百周年記念 庄内』を読む」のようなものを設けてもよいけれど、これまで通り「locī」(ロキ、場所)に置こうと思っている。
注
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